PRP(多血小板血漿)治療とは?効果・仕組み・適応疾患を専門医がわかりやすく解説

PRPとは?仕組みと基本的な働き

PRP(Platelet-Rich Plasma:多血小板血漿)とは、患者さんご自身の血液から血小板を高濃度に抽出し、患部に戻して治癒を促す医療の一種です。血小板は「かさぶたの材料」として知られ、ケガをした際に最初に働く細胞です。出血を止めるだけでなく、組織修復を促す成長因子を多く含んでおり、筋肉・腱・靭帯・軟骨などの損傷や慢性的な炎症に対して自然治癒力を高める効果が期待できます。

血小板の一般的な役割は大きく分けて以下の3つです。

  • 止血作用(血を止める)
  • 損傷組織の修復開始(成長因子の放出)
  • 炎症反応の抑制

特に関節や筋・腱・靭帯の痛みに対して行うPRP治療では、②と③が重要なポイントです。

PRPの魅力 ― なぜPRPを専門にしてきたのか

PRPは「自分の血液の成分」を利用するため、アレルギーや拒絶反応が極めて少ない治療です。
私はこれまで多くの方にPRP治療を行ってきましたが、重篤な副作用を経験したことはなく、安全性の高さは実感しています。

一般的な注射治療のひとつにステロイドがありますが、ステロイドにはコラーゲン分解作用があるため、投与回数に制限があります。一方で、PRPはステロイドと同等、あるいはそれ以上の鎮痛効果を示すケースが報告されているにもかかわらず、重篤な副作用の報告は極めて少ないことが特徴です。「薬剤は効果が強いほど副作用も強くなる」という一般的な医療の常識に当てはまらない点は、PRPの大きな魅力のだと感じています。

自分の身体で実感したPRPの効果

実は私自身、これまで何度も自分の身体にPRP治療を行ってきました。
最初のきっかけは、左膝の半月板損傷です。ウェイトトレーニング中に受傷し、数日間は痛みで歩くのも難しい状態でした。膝には水が溜まり腫れ上がり、ステロイド注射もほとんど効かず、約1年経っても痛みが完全には取れず困っていました。

そこで初めてPRPを投与したところ、徐々に痛みが軽減し、最終的にはランニングも問題なくできるほどに改善しました。
その後も、肩の靭帯損傷、足底腱膜炎、手指の骨折など、さまざまな怪我のたびにPRPを活用し、早期の痛み改善とスポーツ復帰につなげてきました。

PRPが選ばれる理由

PRPは短期間に繰り返し投与できる点が大きな強みです。回数を重ねることで、より高い鎮痛効果や機能改善が得られることもわかっています。
私はこの点を特に重視しており、従来の治療では改善しなかった患者さんが劇的に良くなる場面を何度も経験してきました(私自身の怪我でも同じでした)。「複数回の注射が必要になる」というよりは、「痛みが出たときにいつでも打てる治療」という捉え方が正しいといえます。

PRPが適している代表的な疾患例

 整形外科領域でPRPが有効とされる代表的な疾患は以下のとおりです。

  • テニス肘・ゴルフ肘
  • アキレス腱炎
  • 膝の変形性関節症
  • 肩腱板損傷
  • 慢性の筋・腱・靭帯の痛み
  • 肉離れの治癒遅延

これらに限らず、原則として「痛み」を主訴とする多くの整形外科疾患に応用できる治療法であり、非常に幅広い疾患が治療対象になり得ます

PRPに対する私の考え

 PRPは保険適用外の先進医療である一方、世界中で研究が進み、治療対象は年々広がっています。
私はこれまで多くの患者さんにPRPを行ってきましたが、「安全性」「効果」「持続性」のバランスが取れた非常に優れた治療だと考えています。

当院では症状や生活スタイルを踏まえて、本当にPRPが適しているかを丁寧に判断しています。慢性的な痛みや繰り返す炎症でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。

記事の執筆者

南雲 吉祥

NAG整形外科院長:南雲 吉祥
整形外科専門医、スポーツドクター。元は整形外科領域のがん治療医として活動。その後、米国で再生医療の研究に従事する。渡米中のケガをきっかけに、スポーツ医学の重要性を認識。帰国後、スポーツ外科医に転身する。
現在、アスリートを血液解析と再生医療を用いた医療技術でサポートする、「アスリートサポートプログラム」を展開中。紹介ページはこちら