PRP療法とは?メリットやデメリット注意点についても解説|PRP療法なら白金台のNAG整形外科

PRP治療の定義と意味とは

私たちの血液には、赤血球、白血球、血小板という3つの成分が含まれます。

それぞれの役割は以下の通りです。

  • 赤血球:酸素運搬を行う
  • 白血球:免疫反応に関わる
  • 血小板:血液を固めて傷を塞ぐ

血小板は血液を固めて(凝固と呼びます)、傷口を塞ぎ、創部の治癒を行う役割を持ちます。私たちが怪我をした時にできる「かさぶた」も、血小板の働きによるものです。つまり、血小板には炎症を抑え、傷付いた組織を修復する作用があるのです。この働きに注目して生まれたのがPRP療法です。

PRP(Plate Rich Plasma)とは日本語で「多血小板血漿」と訳します。私たちの体内の血小板を高濃度に濃縮し、炎症を起こして傷付いた関節、筋肉や腱などに投与することで、炎症を抑え、痛みを緩和することを目的としています。

PRP治療は最新の再生医療なのか

PRP治療に関する情報を検索すると、「次世代」「最新」「最先端」といった言葉と並列されているケースが見られます。PRP治療は再生医療の一種ですので、それが近未来的な印象をもたらすのだと考えられます。

しかし、PRP治療は実は歴史の長い治療法です。その原理の発見自体は、1950年代に遡ります。欧米の研究者が、血液凝固のメカニズムを研究するにあたって、PRPの調整方法を開発したのが最初と言われます。

そして、臨床への最初の応用は1998年、歯科領域から始まりました。インプラント治療を行うにあたり、足場となる顎骨の造骨目的で使用されています。その後、PRPの適応は多くの領域に展開されました。

2000年代に入ると、整形外科領域での使用が広がります。2014年、ヤンキース(当時)の田中将大選手が、2018年に大谷翔平選手が、どちらも右肘靱帯の部分断裂に対し、PRP治療を選択したことは、記憶に新しいことでしょう。

PRP治療を行なったアスリートの例

  • クリスティアーノ・ロナウド(サッカー)
  • ラファエル・ナダル(テニス)
  • 田中将大(野球)
  • 大谷翔平(野球)

NAG整形外科におけるPRP治療の適応

当院では、以下の2分野に対しPRP治療を行なっています。

下記の病名・病態に限定したものではなく、治療難治性のあらゆる運動器疾患に適応が可能です。

①関節

関節炎、変形性関節症、半月板損傷、関節軟骨損傷、様々な原因で起きる関節の炎症・痛みなど

②筋、腱

筋炎・筋膜炎、腱炎(アキレス腱炎、捻挫、テニス肘、ゴルフ肘、腱鞘炎)など

PRP治療のメカニズム

PRP治療では、ご自身の血液中に含まれる血小板と呼ばれる細胞成分を選択的に抽出し、高濃度に濃縮して、対象となる部位に注射で投与します。

投与された血小板は、その後緩やかに分解されていきますが、その過程で内部に含んだ成長因子を周囲に分泌します。この成長因子は組織の炎症を抑え、再生を後押しする効果がある為、注射に伴い局所の疼痛が次第に軽快していきます。

成長因子は厳密には「サイトカイン」といい、その為、PRP治療をサイトカイン治療と呼ぶ場合もあります。

当院では、私がスポーツドクターということもあって、運動に伴う外傷治療に用いるケースが多いです。一方で、一般的な整形外科領域では、治療難治性の変形性関節症に対して用いることが多く見られます。これまで、ヒアルロン酸注射や副腎皮質ステロイド注射への効果が乏しい変形性関節症には、手術以外に治療法がありませんでしたが、PRP治療は標準的な外来治療と手術療法の間に位置する治療法として、手術を希望されない方への治療オプションとして広がりを見せています。

PRP治療後、効果が出るまで

PRP治療では、生体成分である血小板を抽出し、内部の成長因子が創部に浸潤していくことで組織の炎症を改善しています。ただ、投与した血小板から成長因子の分泌が開始されるまでには、少し時間がかかります。そのため、PRPを投与してから、実際に治療効果を体感するまでには、一般的に2-4週間程度の時間が必要とされています。

PRP治療はドーピングの対象外

PRPは投与部位に関わらず、ドーピングの対象外です。そのため、運動を行なっている方でも、時期を気にせず投与が可能です。

PRP療法のメリットとデメリット

メリット

  • ご自身の血液を使用しているため、重篤なアレルギー反応のリスクが低い
  • 適切な局所安静を維持した場合、一般的な鎮痛剤や副腎皮質うステロイド注射よりも高い除痛効果が期待される
  • ドーピングの対象外である

デメリット

  • 効果発現までに、一定の時間が必要
  • 保険適応ではないため、自費治療になる

NAG整形外科のPRP治療は即日投与可能

当院のPRP治療は日帰りで可能です。

受診当日、採血を行い、1時間ほど(※)お待ち頂ければ、その場で投与が可能となります。

※外来の予約状況によります。

投与後は、そのままご帰宅頂けます。

具体的な治療の流れ

  • 当日、外来で採血を行います。1部位に対し、1回に行う採血量は20mlほどです。
  • 作業室で作成を開始します。遠心分離機という機器を用いて血液を高速回転し、血小板層のみを抽出、高濃度に濃縮します。
  • 1時間ほどでPRPが完成します。作成中は、院内・院外ご希望の場所でお待ち頂けます。
  • 診察室で投与を行います。
  • 投与後、出血などの異常がないことが確認できたら、そのままご帰宅頂けます。
  • 治療当日は入浴は控え、局所を極度に温めないようにお過ごし頂きます。

PRP治療の注意点

当院のPRP治療は、受診当日に受けることが可能ですが、以下に該当する場合、初診当日にはご提供できません。

  • 未治療の関節症・筋腱損傷の方:まずは標準的な保険治療をご案内します。PRPは標準治療の効果が乏しかった場合が良い適応となります。そのため、まずは標準治療への反応性を確認することが大切となります。
  • 他院で治療後であったとしても、適切な治療プロトコルを踏んでいないと判断した方

    適切な画像検査が行われていない方:特に関節症の場合は、現状の詳細な把握にMRI検査が必要となります。他院で既に治療を行なっている場合でも、こうした詳細な画像検査が未施行の場合は、まずは画像検査を優先的に行なっていきます。

    適切な回数・内容の治療を行なっていない方:前医で十分な治療が行われていない方、あるいは治療途中で自己中断している方については、まずは標準治療への反応を確認する必要があるため、即日のPRP治療は控えています。

また、以下に該当する方の内、罹患されている疾患の治療がPRP治療より優先されると判断された方は、PRP治療は実施できません。

  • がん治療中
  • 感染症がある
  • 発熱がある
  • 薬剤過敏症がある
  • 免疫抑制剤を飲んでいる

PRP治療後の安静期間について

一般的に、投与部位については一定の安静期間が必要となります。負担がかかる動作を意識的に制限頂ければ、特に固定などは必要ありませんが、ご希望の場合にはサポーター等による固定をご提案致します。

また、投与後の具体的な安静期間については、活動状況に応じて判断致しますので、外来でご相談ください。

PRP治療の副作用

本治療はご自身の細胞を用いるため、アレルギーの危険性が少なく、重篤な副作用リスクが低いことが特徴です。

一方で、PRPを注射した直後は、局所内圧の上昇から一時的に痛みが強まる可能性があります。特に、関節内注射の場合は、高頻度に注射直後に一時的に痛みが出ます。

そのほか、注射部位の痛みや腫れ、発熱など、注射に伴う一般的な副作用が生じるリスクがありますが、このリスク頻度はヒアルロン酸や副腎皮質ステロイドの関節内投与と同じ程度です。

PRP治療後の流れ

治療当日は、そのままご帰宅頂けます。特に、入院や院内で長時間の安静は必要ありません。

治療後、1週間から2週間後に再診頂きます。以後は、2-4週間置きに再診頂き、経過を確認していきます。

NAG整形外科でPRP治療をご希望の方は
下記よりご予約ください。

記事の執筆者

NAG整形外科院長:南雲 吉祥
整形外科専門医、スポーツドクター。元は整形外科領域のがん治療医として活動。その後、米国で再生医療の研究に従事する。渡米中のケガをきっかけに、スポーツ医学の重要性を認識。帰国後、スポーツ外科医に転身する。現在、アスリートを血液解析と再生医療を用いた医療技術でサポートする、「アスリートサポートプログラム」を展開中。

  • SJ Jang et al.: Platelet-rich plasma (PRP) injections as an effective treatment for early osteoarthritis. European Journal of Orthopaedic Surgery & Traumatology. 2013; 23: 573-580
  • T Spaková et al.: Treatment of Knee Joint Osteoarthritis with Autologous Platelet-Rich Plasma in Comparison with Hyaluronic Acid. American Journal of Physical Medicine & Rehabilitation. 2012; 91: 411-7.